永遠のフローズンチョコレート

永遠のフローズンチョコレート (ファミ通文庫)

永遠のフローズンチョコレート (ファミ通文庫)

★あらすじ
 父の最初の再婚相手を殺して以来、理保は殺人鬼になった。10人目の被害者は不死身の実和だった。実和は理保の恋人の基樹と親密になり、理保は気が気ではない。理保と基樹の付き合いが始まったのは二年前のバレンタインデーだったが、3度目のバレンタインデーが近づいてくる。実和と基樹の関係にいらだつ理保は殺人を楽しめなくなってしまう。経済的基盤である両親が外国で消息を絶ち、基樹も不安に沈む。バレンタインデーの前日に実和に再び刃を向け、殺せないことを確認した理保は、翌日、基樹にチョコレートを渡す。基樹の元には両親からのエアメールがまた届いていた。

★特徴
 ラノベ的要素十分なのにも関わらず、全体を通して地味。派手な爆発とか、わかりやすく「世界が終わる」みたいな事態は起きてこない。『殺×愛』みたいな組織VS組織のような権力構造や戦争みたいなのもなし。『砂糖菓子〜』もそうだったけど、経済的問題がある程度の切実さを帯びるのは印象的だった。根拠のない絶望と、やけくそな独白による断定、それから静かさが特徴かも。

★感想
 しばらく置いてまた読み返したい作品。『砂糖菓子〜』のように迫りくるせつなさでなくて、こちらから同情してあげるようなせつなさが心に残った。経済的に保障されていたり、恋愛の相手や友人がいて、それをデフォルトとして、そのうえで憂鬱や倦怠を感じているという贅沢な状態の、底辺にフォーカスしている感じに共感を覚えた。それも、かなりオフトーンなのにポップなところがあり、構造や表現が明確なのも良かった。冗長なテイストもありつつ、冗長すぎるかな、いやこれくらいは大丈夫かな、というギリギリのところに調整してあるのも巧いと思ったです。装丁とマッチしていると思いました。